Mountain W-350J(1975)
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見た目はGibsonのJ-45のコピーモデルですが、内部のブレース構造などはMartinのD-18ないしD-28とほぼ同じ構造をしており、そのためにGibsonとはまったく違う鳴り方をするのがご愛嬌ですが、その鳴りっぷりはなかなかのもので、単に国産ヴィンテージギターと考えればかなり優秀な個体です。
2018年7月1日にヤフオクで新潟在住のギターマニア氏のコレクションを譲り受けました。 我が家では「Mountain3号機」となります。
当時の林楽器では主として4つのブランド名で製品を送り出していました。すなわちBurny、Rider、Pearl、そしてMountainです。
この中でBurnyはFERNANDESのGibsonコピー系のブランドとして人気が高く、Riderも後のHeadwayの廉価版ブランドというイメージが強く、やはり人気の高いブランドとなっていますが、一方でPearlはもともとドラムセットのブランドをなぜかギターにも採用したものでありほとんど知名度はありませんでしたし、MountainもBurnyやRiderに比べたら極端に知名度が低く、知っている人はほとんどいなかったのでした(そのため市場価格も安く、今回3本仕入れても極めて安価で入手することができました)。
ところがぼくは十代の頃からMountainを知っていました。なぜなら自分で持っていたからです。GuildのF-40コピーでしたがそれはネックが薄く元起きも発生してしまって手放す羽目になりましたが、弦が新しいうちはちょびっとだけGuildっぽいイメージで鳴る時期もあったのです。今から思えばその個体はまだ百瀬氏が林楽器に入る前の個体ではなかったかと思われます。なぜってネックのジョイント部分が違ったからです(当時からそんなことばかり調べてたやつ)。
このW-350Jというギターに話を戻しますが、スペックで言うとトップはスプルース単板、サイド・バックはローズウッドのラミネート、ネックはナトーで、指板・ブリッジはローズウッドです。当時では中級機扱いで、限られたコストの中でよくここまで作り込んだと思います。
鳴りはと言うと、Gibsonそっくりの見た目に反してMartin系の素直な鳴りで、癖がなく何でもこなします。簡単に言ってしまうとMartinをデチューンした感じの鳴りでしょうか。それでもバランスが良くネックの全域に渡って良く鳴ってくれるので、このままステージでも使えるくらいのクオリティは持っていると思います。またネックの状態などもぼくが若い頃に使っていた個体とはまったくレベルが違います。やはり若い頃から百瀬氏の技術は卓越していたのでしょう。
百瀬氏の作るギターはHEADWAYに移籍してから急に音色が硬質になっていったと理解していて、何本か自分で使ってみてそれを実感しました。その仮説を証明するためにそれ以前の製品を何本か集めて試してみようと思ったのが今回Mountainを3本集めたきっかけでしたが、それはどうやら正しかったようです。やはり林楽器時代の個体は耳あたりがマイルドなのです。この理由はおそらく製作時の治具などの精度がHEADWAYに移籍した時点からより高くなり、よりかっちりと組み付けられるようになったためではないでしょうか。もちろんHEADWAY以降の個体も長期間弾き込めばマイルドになっていくのはわかっていますが、とてもそれまで待つことはできませんでした。その点、今回のアイデアは自分でもなかなか良かったと思っています。
今までにHEADWAYのギターは何本か買ってきましたが、どれも音が硬質なのが耐えられなくてすべて放出してしまいました。すごい素質のギターばかりでしたから、残念でなりません。しかし今回のMountainの3本はどれも音色がマイルドで気持ち良く使うことができますし、うんと安く入手することもできました。これはアイデアの勝利ではないかと自画自賛しています。(^^ゞ
(最終更新日 2018年12月8日)