K.Yairiというブランドについて
国産ギターとして長い歴史を誇るブランドですが、先代社長である矢入一男氏がMartin社で学んだ技術を生かして経営をしていたせいか、その製品もほとんどがMartinコピーから始まったことから、Martinに似てMartinにあらずという微妙な製品が主力の時代が長く続いていました。とはいえ品質は良かったので音色の好みによっては積極的にK.Yairiを選ぶ選択肢もあったのだけど、価格がMartinに比べてさほど安くなかったためにバカ売れする要素は乏しかったし、仮に人気が出たとしても製造本数からして大量のニーズに応えることは不可能だったでしょう。
それが近年はオリジナリティの高い製品を数多く送り出すようになり、その音色や弾き心地も多様化してきて、K.Yairiというブランドのギターたちの存在感が一気に高まってきました。相変わらず価格は安くはないのだけど、その品質や音色からして納得できるものになっているから、知る人ぞ知るブランドだったものがもう少し広く認知されるようになったと言えるでしょう。
ぼくも現在はK.Yairiのギターを3本持っているけれど、どれもボディスタイルも違えば音色も違います。でもそれぞれがとても魅力的。これはぼくが考えるギターブランドとしての理想形に近いし、逆に言えばそういう状況になってきたからK.Yairiのギターを集め始めたとも言えます。
国産ギターのブランドも多様化してきました。大メーカーとしてはもちろんYAMAHAが最右翼ですがMorrisもそれなりに頑張っています。中規模としてはHEADWAYやTakamineなどが安定しているし、中小ブランドや個人ルシアーは数知れないほど増えました。こうして選択肢が増えたことはとても喜ばしいことだし、技術の進歩のためか安価なギターでも最初から良く鳴る個体が増えたと思っています。ギター用の木材、いわゆるトーンウッドが種類によって枯渇しつつあることは懸念材料ですが、人工材もいろいろ開発されつつあるし、すべてがグラスファイバーのギターでもちゃんとそれっぽい鳴りを出すようになったことを考えれば、ギターという楽器は今後も造り続けられるだろうし、個体差もほとんど無くなって、安心して選べるようになるのかも知れません。
ただし、そうなったら御茶ノ水巡りなんていう楽しみも無くなるんでしょうねぇ。ぼくらの世代はどうせそこまで生きちゃいないからいいんですけどね。(^^ゞ