2026年5月2日 Martin D-28について

2026年05月02日

 前回はD-35について書いたので、D-28についても書いておこうと思う。

Martin D-28のブレース構造比較(主にD-35との違いを中心に、時代別も含めて)。1. 基本スペック比較(Standard Seriesの代表例)項目 D-28 (従来〜2024頃) D-28 (2025 refreshed) D-35 (Standard)
トップブレース幅 5/16インチ 5/16インチ(または同等) 1/4インチ
ブレース形状 非スキャロップド(ストレート) GE Scalloped(Golden Era) 非スキャロップド(ストレート)
シフト Forward Shifted Forward Shifted Forward Shifted
バック構造 2枚バック 2枚バック 3枚バック
バックブレース 標準Dサイズ 標準Dサイズ 000サイズ相当(軽め)
2. D-28のブレースの特徴

  • 幅が太い(5/16"):D-35の1/4"より剛性が高く、パワー・明瞭度・バランスが良い。低音が締まり、高音の抜けも良い傾向。
  • 非スキャロップド(従来型):トップの振動を適度に抑え、耐久性が高く、フラットピッキングやバンド演奏に向く。
  • 2025年リフレッシュモデル:Golden Era Scalloped(GEスキャロップド)採用で、レスポンス向上・低音の膨らみ・複雑さが増し、ヴィンテージ寄りの音に近づきました。D-35とはまだブレース幅が違うので、根本的なキャラクターは別物です。 youtube.com

3. D-35との主な違い(前回の続き)

  • **D-35の軽いブレース(1/4")**は00サイズ相当で、低音が豊かで暖かく、ダイナミック。ソロやストラミングで「ブーミー」「ソングライター向き」と評されることが多い。
  • D-28はよりバランス型でパンチがあり、ライブやアンサンブルで抜けやすい。
  • 三枚バックの影響より、ブレース幅と形状の違いが音の差の大部分を占めます。 umgf.com

4. 他の比較ポイント

  • HD-28:D-28のスキャロップド版(1/4" or 5/16"幅でスキャロップ)。よりレスポンシブでヴィンテージライク。
  • 歴史的背景:D-28は1930年代からの伝統モデルで、長らく5/16"ストレートが標準。D-35(1965年〜)は在庫対策と独自音作りのために軽いブレースを採用した「実験的」モデルです。
  • 音の傾向まとめ:
    • D-28:クリア、パワフル、バランス(特に2025 GE版は暖かみ↑)
    • D-35:低音豊か、暖か、ダイナミック

実際の音の違いは木材の個体差や弦、演奏スタイルでかなり変わります。可能なら両方を弾き比べてみてください。特に2025年のD-28はスキャロップド化で評価が変わっているようです。

 ということで、ぼくは2025年以降の最新型はまだ良く知らないから何とも言えないが、スキャロップ化で鳴りやすくなっているだろうことは容易に想像できる。いずれにしてもD-28と言う楽器の範疇からは大きく変わることはなく、ヴィンテージライクなイメージが増しているんじゃないかと想像できる。それがMartinという企業の音分けの巧みなところだからね。


 ついでに、ヴィンテージD-28についても知っている範囲で書いておこうと思う。

ヴィンテージ Martin D-28 のブレース詳細(主に1930年代〜1950年代を中心に)。時代別のブレース変遷(D-28の場合)D-28は1934年頃に14フレット・ドレッドノートとして本格的に登場し、ブレースは時代で大きく変化しました。

  1. Pre-war(1934〜1938頃) — 「黄金時代」の典型
    • スキャロップド X-bracing(深く削った扇形)。
    • Forward Shifted(前寄り):Xの交差部がサウンドホール縁から約1インチ(2.5cm)程度と前寄り。
    • これによりトップの振動が活発で、低音の膨らみ・ダイナミクス・複雑な倍音・オープンな響きが特徴。ヴィンテージ好きが最も求める「Pre-war sound」の核心です。
    • トップ材は主にAdirondack Spruce(赤松)。 umgf.com
  2. Late 1938〜1944頃 — Rear Shifted 期
    • 依然としてスキャロップドだが、X-braceを後ろにシフト(サウンドホールから1 7/8インチ程度など)。
    • 重い弦への対応(構造強化)のため。後期はスキャロッピングがより深くなる傾向もありました。
    • 1944年までスキャロープドが続き、わずか219本程度の1944年製D-28がスキャロープドだった記録もあります。 umgf.com
  3. Late 1944〜1950年代以降(Post-war)
    • スキャロープド終了(耐久性・保証問題、重い弦対応)。
    • 徐々にテーパード(先細り)→ **ストレート(非スキャロップド)**へ移行。
    • ブレースは5/16インチ幅が標準になり、剛性が高くパンチがありバランスの取れた音に。現代のStandard D-28の原型です。 guitarcenter.com

その他のポイント

  • 幅:主に5/16インチ(D-35の1/4インチに対して太め)。
  • トーン・バーや補助ブレース:X-braceの他にトーンバー、ブリッジプレート(初期は小型)、ポップシクルブレース(一部モデル)など。
  • バックブレース:2枚バックに合わせた標準的な剛性。D-35のような000サイズ軽めではありません。
  • ネック:一部にSteel T-bar(鋼鉄補強)が入る時代もありました。

音への影響

  • Pre-war(スキャロープド前寄り):レスポンシブで低音豊か、複雑で「生きている」ような音。現代のHD-28やAuthenticシリーズがこれを再現しようとしています。
  • Post-war:よりストレートでパワフル、ライブ映えするバランス型。

ヴィンテージD-28は個体差(木材、状態、修理歴)が非常に大きいので、実際に弾くか専門家に相談するのがベストです。Pre-warは希少で高額(数万ドルクラス)ですが、音の伝説は本物です。参考:UMGF(Unofficial Martin Guitar Forum)やMartin公式資料、Authenticシリーズのスペックが詳しいです。


 さらに、1937年製について深堀りすると、次のようになる。

1937年製 Martin D-28 のブレース詳細(Pre-war黄金期の代表例)。主な特徴

  • ブレースタイプ: スキャロップド X-bracing(手作業で深く削った扇形)。
  • 位置: Forward Shifted(前寄り) — Xの交差部が**サウンドホール縁から約1インチ(約2.5cm)**の位置。
    • 1938年頃にRear Shifted(後ろ寄り、約1-7/8インチ程度)へ変更される前の最終形です。
  • ブレース幅: 主に5/16インチ(約8mm)。
  • 素材: Adirondack Spruce(赤松) — 当時の標準で、硬くてレスポンシブ。 onemanz.com

構造のポイント

  • X-braceに加え、トーンバー(tone bars)とブリッジプレート(tucked bridge plate:橋の位置に収まる小型のもの)が特徴。
  • スキャロッピングは深めで、トップの振動を最大化。低音の膨らみ(bass bloom)とダイナミックレンジの広さが際立ちます。
  • 全体として、軽快でオープン、複雑な倍音を持ち、現代の「Pre-war sound」の理想形とされています。MartinのAuthentic 1937再現モデルもこの仕様を忠実に再現しています(Forward Shifted Scalloped Adirondack braces)。 onemanz.com

音の特徴(一般的な評価)

  • 低音: 豊かで響きが深く、膨らみがある。
  • 中高音: クリアで倍音豊か、抜けが良い。
  • 全体: レスポンシブで「生きている」ようなダイナミクス。フラットピッキングからフィンガーピッキングまで万能ですが、特にソロや小編成で真価を発揮します。
  • 1937年は1-3/4インチ・ヴィンテージVネックとの組み合わせも高く評価されます。

注意点

  • 個体差が大きい(木材の密度、経年変化、修理歴など)。
  • 本物の1937年製は極めて希少で高額。内部を確認するにはサウンドホールから鏡や内視鏡を使います。

この仕様は1934〜1938年頃のPre-war D-28のピークとされ、多くのマニアが「究極のドレッドノート」と呼ぶ理由です。MartinのCustom Shop Authenticシリーズで再現されているので、現代で近い体験が可能です。

と言う感じだろうか。

 さらに、最近は驚くほど高額になってしまったGibson J-45のブレースとも比較してみよう。

Gibson J-45 と Martin D-28(特にヴィンテージ1937年製)のブレース比較。両者はアイコニックなドレッドノートですが、ブレース設計の思想が根本的に異なり、それが音のキャラクターの大きな違いを生んでいます。比較表(ヴィンテージ中心)項目 Martin D-28 (1937年頃) Gibson J-45 (ヴィンテージ / 標準)
ブレースタイプ スキャロップド X-bracing(深く削る) Hand-scalloped X-bracing(手作業スキャロープ)
X位置 Forward Shifted(前寄り、約1インチ) 標準位置(Martinほど極端に前寄りではない)
ブレース幅 5/16インチ程度 似た幅だが、Gibson特有の配置
追加ブレース トーンバー(2本) スキャロープド・トーンバー + 横方向ブレース
トップ材の影響 Adirondack Spruce(硬め) Sitka Spruce(標準)
全体の剛性 軽め(振動重視) バランス型だが、Martinより「暖かみ」寄り
詳細な違い

  • Martin D-28 (1937):
    X-braceを前寄りに配置し、深くスキャロープすることでトップの振動を最大化。低音の膨らみ(bass bloom)が強く、ダイナミクスと複雑な倍音が特徴。クリアでパワフル、投影性が高い傾向(特にフラットピッキング向き)。
  • Gibson J-45:
    Hand-scalloped X-bracingを採用(ヴィンテージ期、特に1940s-1950sは深くスキャロープ)。ただし位置は標準的で、Martinのような極端なフォワードシフトではない。
    Gibsonらしい暖かく太い中低音、歌うようなミッドレンジ、甘いトーンを生む。ストラミングやボーカル伴奏に最適で、Martinより「丸く」感じる人が多い。

音の傾向まとめ

  • Martin (1937 Pre-war): 低音の響きが深く広がり、高音の抜けが良い。明瞭でバランス良く、持続性が高い。
  • J-45: 低音が太く暖かく、中音域が豊かで「歌う」ような響き。デケイ(減衰)が比較的速く、親しみやすいトーン。
  • 共通点:両者ともスキャロープドX-bracingでトップのレスポンスを重視。木材(Rosewood vs Mahogany)とボディ形状(Square vs Slope Shoulder)の影響が大きい。

現代モデルでの違い

  • 現代のMartin D-28/HD-28やAuthenticシリーズは1937年仕様を意識。
  • 現代J-45はHand-scalloped X-bracingを継承しつつ、時代で微調整(一部非スキャロープ期あり)。

結論: Martinは構造的に低音を強調した精密設計、Gibsonは暖かさとプレイアビリティを重視したバランス設計と言えます。ブレースだけではなく、**スケール長(Martin 25.4" vs Gibson 24.75")**や木材、ボディ形状の組み合わせで大きく差が出ます。

 こんな感じだろうか。ぼくはGibsonのギターにお金を出すならMartinを買ってしまう性格なので、Gibsonのギターを長く所有したことがないから、知識としてはこの辺が限界だが、ご参考になれば幸いです。

 長くなってしまったので、このへんで今回は終わろうと思う。

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