めっちゃ悩んだこと・クルマについて
青天の霹靂というのは、こういうことなのかと思った。何かというと、クルマのことである。
何度も書いているとおり、現在のぼくの愛車は、スラ吉くんことホンダのN-BOX SLASHターボである。乗りやすく、エンジンも元気で燃費もよく、とても気に入っているのだが、昨日、突然こんなオファーをもらった。
S氏「abuさん、ぼくのクルマ買いませんか?」
abu「クルマって、どれですか?」
S氏「エブラーです」
abu「まだ新しいじゃないですか」
S氏「そうなんですけど、この辺を走るなら軽トラがあるし、エブラーを出して、乗用車を買おうかと思って。考えてるのは、MINIのClubmanとか」
abu「そうなんですか。ガチでちょっと考えますね」
S氏「ぜひお願いします。愛着もあるクルマだし、どうせならよく知ってる人に買ってほしいと思って」
ということだった。これで、一晩めっちゃ考えることとなったのだ。
ちなみに「エブラー」というのは、スズキのエブリィのバンで、フロントマスクをハスラー風にアレンジし直したもの。エブリィとハスラーをあわせてエブラーと呼んでいるわけだ。
車両のグレードはPCで、パートタイム4WDの4ATで、エンジンはノンターボ。車内にはクルマのベッドキットで有名な「MGR Custums」さんのベッドキット(注1)が装備してあり、足回りはこれも有名な「Forest・Auto・Factory」さんのリフトアップスプリング(注2)が装着されていて、タイヤもけっこう高価なテレーンタイヤにグレードアップされている。しかも、これも「Forest・Auto・Factory」さんで取り扱っている高級な寝具である「ボディドクター・パーフェクトマット(注3)」という、車中泊にも適したマットまで付けてくれるという。
(注1:クルマの室内に取り付けてベッドとして使えるようにするフレームと板のセットであり、上部のベッドで寝て、その下部は荷物の収納に使える優れものである。いろいろなメーカーから出ているが、MGR Custumsのそれは極めて精度が高く、実に優秀である)
(注2:クルマのサスペンションのコイルスプリングで、純正のものと交換することにより、車高が少し上がり、かつ乗り心地や操縦性、安定性まで改善するという、魔法のようなスプリングである。ぼくも何度か装着車を運転させてもらっており、その効果を体感している)
(注3:もともとは医術用に開発されたマットであり、身体にとても優しい弾力を持ち、腰痛持ちでもかなり気持ちよく寝られる等の特徴を持つ。ちなみにこのマット、一人分で諭吉さんが4人ほど必要な高級品である。特徴は「正反発」という、高反発でも低反発でもない弾力のウレタンを使用していることで、指で押すと凹むが、手のひらで押すと凹まないという、不思議な素材で作られている)
以上のように、新車で購入し、まだ17,000km程度しか走っていない程度の良い車体で、車中泊にも使えるような装備を備え、かつパートタイム4WDで、リフトアップし、テレーンタイヤも履いているという、かなりの悪路でも走破できる仕様になっている。つまりは、ぼくが近い将来考えているクルマ旅にももってこいのスペックとなっているクルマなのだ。
提示された価格は伏せるが、この装備からしたら、かなりの好条件である。したがって、以下のように、ガチで悩んだ。
我が家はぼくの愛車スラ吉くん以外に、女たちが乗っているハスラーターボ4WDがある。いわゆる2台体制だ。そこへ前述のエブラーを加えるとなると3台体制となり、駐車場にも困るし、資金面でも負担が大きくなる。だからといって、スラ吉くんかハスラーのいずれかを出してエブラーと入れ替えるのも悩ましい。ぼくはスラ吉くんをこよなく愛しているし、女たちもハスラーをかなり気に入っている。どっちを出すことも難しいのだ。しかも走行距離が17,000kmとなると、スラ吉くんもほぼ同じである。
仕事を完全にリタイヤしたら、自分へのご褒美に中古の軽バンでも仕入れて、一時的に所有するという形にして車中泊の旅をするというのも、考えの一つとしてはあるものの、まだちょっと次期的には早すぎる。ましてやぼくのやり方だと、旅に出るのもスラ吉くんで行こうという気持ちが強くなっているくらいなので、軽バンを仕入れるという案そのものもほとんど消えかかっていた状況なのだ。そこへ降って湧いたような好条件のクルマが出たという、幸運なようでいて、ある意味悲劇でもあるような感じ。
とりあえず、昨晩は現地で宿泊することにもなっていたから、どうせならと、当該のエブラーちゃんの車内で寝かせてもらうことにした。助手席を前に倒し、2m以上の長さを確保し、ベッドキットの上にパーフェクトマットを敷き、その上に愛用のコールマンの寝袋とキャプテンスタッグのインフレータブルの枕を用意して、一晩熟睡することができた。ベッドキットのおかげで凸凹がないから、寝心地はとてもいい。
今日は今日で、近くの道の駅までエブラーちゃんの試乗をさせてもらうことにした。このクルマは以前にも一度、たまたま似たような距離を運転させてもらったことはあるのだが、2度めの今回はオファーが来ていたので、真剣に試乗した。
乗り心地は性能の高いスプリングのおかげで商用車らしからぬ心地よさだし、操縦性も素直で楽である。エンジンはノンターボだが街中などではほぼ問題ないものの、坂道ではややかったるく感じることもある。ボンネットがないタイプの軽バンなので、運転姿勢が上から見下ろす感じになるのは慣れで解決するだろうが、気になったのはブレーキだ。けっこう早めに踏み始めないと、狙ったところで止まりきれない感じがするのだ。思い切り踏み込めばもちろん止まるが、もともと純正の12インチのタイヤに合わせた小径のブレーキなので、インチアップした14インチのテレーンタイヤを制動するにはいささか力不足なのかも知れない。
またエブラーちゃんの燃費はメーター読みで13.3kmと表示されていた。大抵のクルマはメーターの表示よりも多少実燃費は劣るから、おそらくは12kmあたりではないかと推測できる。仲間内のノンターボエブリィ乗り数名にも燃費を聞いたことがあるが、よほどエコランに徹すれば15kmくらい行くこともあるけど、普通に走ったら12~13kmくらいという声が多かった気がするから、おおむね当たっているような気がする。
ちなみに、スラ吉くんはというと、昨日から今日にかけての往復で約200km走ったのも含めて、前回満タンにしてから440km走り、帰ってきてから給油したらほぼ20リッター入ったから、大まかな燃費としては22kmと計算できる。この違いはさすがに無視できないし、帰路で運転感覚を改めてじっくり味わってみたら、やはり圧倒的にスラ吉くんのほうが好みに合っている。乗り慣れているということもあるだろうが、そもそも運転姿勢が違う。長時間運転するとなると、明らかにスラ吉くんに軍配が上がるのは間違いないと思う。車重や、乗用車と商用車の違い等はあるにせよ、かたやターボエンジンでリッターあたり約22km、かたやノンターボエンジンで約13kmというのは、あまりにも差がありすぎる気がしてならないが、これが現実の数値なのだから、認めざるを得ない。
こうなってくると、こと走行性能に関しては、居住性能と悪路走破以外ではほぼスラ吉くんの圧勝となる。エブラーちゃんの良さである居住性と悪路走破性のほうは、荷物の量さえ必要最低限に工夫してやれば済む。広ければ広いで、結局は余計なものまで積み込んでしまうものだから、そのクルマの広さに応じてどうにでもなると思うようになったし、悪路走破性と言っても、そんなに道の悪いところ(林道など)に行く気もない。
かくして、今回はやはりスラ吉くんに乗り続けようと決めたのだったが、それにしても惜しいオファーだった。例えばリタイヤ後で家も建て直して駐車場も広くなっていたりと、条件が変わっていれば、一も二もなく買っただろうが、タイミングが良くなかったということになるだろう。
つまらないことだが、ぼくの手に渡ったら、「エブラー」が「アブラー」になっただろう(笑)。その名前はなかなか悪くなかったな(笑)。
S氏は顔が広いので、仲間内できっと買い手が現れることだろう。いい人に渡るといいね、エブラーちゃん。